フィリピンにおける特殊税務に関するコラム
今回はフィリピンの自己株式の取得時の留意点について記載します。特に、会計や税務のみならず、会社法等にも影響している点や通常の株主変更手続きよりも複雑であり、かつ、株主がフィリピン国外にいることも少なくないことから、その調整も重要です。
- 自己株式の取得について
自己株式とは、自社が発行した株式を自社が買取り等で取得することをいいます。
- 自己株式の取得が増加している背景
下記のように、(a)親会社の事業承継によるケース、(b)会社法改正によるケースが主な理由と考えられます。
(a)事業承継のケース(相続によるフィリピン子会社の株式分散の回避)
日本において、会社の事業承継に対する動きが活発になっており、特に、相続に対する問題をクリアしないといけないケースがあります。そのため、経営上において無用な争いを防ぐために、保有するフィリピン法人の株式を自社が買戻すことにより、様々なリスクを回避することが可能になります。
(b)会社法改正によるケース
フィリピンにおいて、新会社法が施行されたことに伴い、機関設計を簡略するために、取締役を削減すると同時に、保有している株式を自社が買取るケースがあります。
3.各種確認事項
自己株式の取得については、各種の視点から検討し、確認する必要があります。実務レベルにおいては、様々な現状確認が重要であると同時に、関係者に対してはその趣旨の説明や調整が必要です。下記に、確認項目別に記載します。
確認項目 | 確認内容 | 留意点 |
株主 | ・株券や株主名簿(緑色の台帳)の保管状況
・GISの登録状況 ・各種議事録 |
株券を紛失等した場合には、会社法による所定の手続きを実施 |
秘書役 | ・実在性
・関係書類の保管の有無 |
事前に趣旨説明を行い、書類に不備がないようにしておく |
外資規制 | ・規制業種の場合は、自己株式取得後の議決権比率を確認 | |
会社法 | ・自社の利益剰余金(Unrestricted)の金額
・自己株式の取得のための取締役会、株主総会議事録の準備 |
新会社法第40条(Power to Acquire Own Shares)において、取得に対する財源規制や諸条件の記載あり |
会計関連 | ・会計処理を監査人等と確認 | 自己資本の減少により、財務状況に留意 |
税務関連 | ・下記図を参照
・CAR (CertificateAuthorizing Registration)の取得手続き |
キャピタルゲイン税については租税条約の適用検討を行う |
*税法上の留意点を記載しました。
自己株式 | 印紙税 | キャピタルゲイン税 | ドナーズ税 |
【取得】 | △ | 〇 | 〇 |
〇:課税、△:ケースにより課税
印紙税:額面金額 x 0.75%
キャピタルゲイン税:(売買金額 - 購入金額) x 15%
ドナーズ税:(時価 - 売買金額 - 250K) x 6%
ただし、組織再編の一環であるなどとする場合や寄付の意図がない取引の場合、課税されないケースもあるため、専門家との協議が必要です。(RMC No. 30-2019 等)
本記載事項は事業運営上の参考としての内容であり、法律、許認可、税制、社会保険、その他の法令を解説するものではなく、その内容について何ら保証するものではありません。
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