コラム

日比租税条約による節税案について

1.日比租税条約の基礎 

経営上の観点において、フィリピンで得た利益を日本へ還流する際に考えなければならないのがこの「日比租税条約」です。租税条約の目的は「二重課税の回避と脱税の防止」ためと謳われています。下記に、よくある取引別の源泉税の税率を比較してみました。フィリピンでの手続きにおいては「CORTT Form」という申請書を税務当局へ提出することにより、適用することが可能となっています。

 

取引内容 フィリピン税法 日比租税条約(限度税率)
配当 30% 10%
利子(USD,JPYの場合) 20% 10%
使用料(ロイヤルティ) 30% 10%

* 上記表は一般的な事例を簡易に示したものであり、ケースによってはこの限りではありません。

 

時々、「フィリピンにおいて租税条約の申請をしなかったら損しますか?」という質問を受けます。答えはYesです。理由は「二重課税の部分が多くなるから」です。もう少し言及しますと「限度税率」という考え方が存在するからです。国際税務においては、限度税率を超える部分は外国税額控除の対象になりません。そのため、その超える部分は損金にはなりますが、控除税額にはならず二重課税の対象になってしまいます。つまり、いかにフィリピンでの納税額を抑えるかがポイントとなります。

 

フィリピン 適用なし 適用あり
使用料(経費) 1,000 1,000
源泉税率 30% 10%
納税金額 300 100
▼日本 適用なし 適用あり
使用料収益 1,000 1,000
源泉税(損金) 200* 0 *限度税率の超過分は損金
法人税率 30% 30%
法人税 240* 300 *(1,000 – 200) x 30%
外国税額控除 100 100 限度税率までしか控除対象にならない
納税金額 140 200
合計納税金額    440 300

* 上記事例は、簡易的なものであるため、実際の計算とは異なります。

上記の事例では、租税条約の「適用なし」と「適用あり」のパターンで支払う税金の比較をしています。上記のように「適用なし」の場合は「外国税額控除」が「300」ではなく、「100」となり、200は控除対象外となり、二重課税が発生してしまいます(ただし、法人税法上の損金に算入することができます)。一方で、「適用有り」の場合はフィリピンで納付した「100」が全額外国税額控除の対象となるため、二重課税は発生しないことになります。

 

2.日本での還付請求方法

利子、配当、使用料の取引について、一定要件を満たすことにより、日本で法人税の還付の可能性があります。詳細については紙面の都合上ここでお伝えすることはできませんが、上記の取引を行っている場合にはその可能性がありますので、お気軽にご相談ください。

本記載事項は事業運営上の参考としての内容であり、法律、許認可、税制、社会保険、その他の法令を解説するものではなく、その内容について何ら保証するものではありません。

   

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